亡くなった方(被相続人)に遺言がある場合と、遺言が無い場合では、相続手続きの進め方が異なる

亡くなられた方(被相続人)の財産(遺産)を、生きている人に分けることを、法律的な言葉で「遺産分割」といいます。

遺産分割とは、カンタンに言えば、誰が、どの遺産を、どのくらい受け継ぐかを決めることです。

遺産分割の手続きや進め方は、被相続人が遺言を残している場合と、遺言が無い場合で、大きく異なります。

したがって、ご家族が亡くなられたら、相続手続きの初期の段階で、まず遺言の有無を確認しなければなりません。

被相続人の遺言の有無がわからない場合は、当センターの遺言の有無の調査代行サービスをご利用ください。

遺言がある場合の相続手続き

遺言による遺産の分け方の指定が最優先

遺言がある場合は、遺言による遺産の分け方の指定が最優先されます(例外ルールはあります)。
(逆に言えば、相続人(ご遺族)が勝手に遺産の分け方を決めることはできません)

つまり、遺言がある場合、誰に、何を、いくら、分けるのかは、原則的には、被相続人の指定通りになります。

なぜ、遺言による指定が最優先されるかというと、それが、遺言者=財産の所有していた方の意思に基づくものだからです。

あなたの財布に入っている1万円札を、あなたが何に使ってもいいのと同じで、被相続人は、自身の財産を、遺言により自由に処分することができるのです。

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言の2種類の方式があり、手続きの進め方には以下で述べるように若干の違いがあります。
(秘密証書遺言という方式もありますが、実際にはほとんど利用されないのでここでは省略します)

しかし、遺言の効力そのものは自筆証書遺言でも公正証書遺言でも同じです。

遺言の執行、遺言執行者とは?

遺言の指定通りに、相続手続きを実行することを「遺言の執行(しっこう)」といいます。

そして、「遺言の執行」を行う人のことを遺言執行者と言います。

遺言執行者は、遺言であらかじめ指定することができます。

遺言執行者には、遺言の作成をサポートした行政書士などの専門家が指定されている場合もありますが、配偶者や子、兄弟姉妹など、信頼できるご家族が指定されている場合もあります。

また、遺言で遺言執行者の指定が無かった場合や、指定されていたとしても何らかの理由(死亡・病気など)で遺言執行者に指定されていた者が就任できない場合には、ご遺族が家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任の申立てを行うことができます。

いずれにせよ、遺言執行者には、遺言を執行する「責任者」のような役割があるため、相続手続きに関する専門的な知識が必要になることが多いです。

また、遺言執行者に指定されたご遺族が、多忙であるため、なかなか遺言の執行を進められないというようなケースもよくあります。

このようなケースの場合、当センターでは、遺言の執行をサポートするサービスも行っています。

詳しくは、遺言がある場合の相続手続き(遺言執行)代行サービスをご覧ください。

自筆証書遺言では家庭裁判所による検認が必要

遺言者が手書きで遺言を書く自筆証書遺言の場合、法律的に正しい遺言であるかを確認するために、家庭裁判所による検認という手続きが必要です。

検認には、手続きに必要な書類を集めたり、家庭裁判所に検認を申し立てて期日の指定を受け、実際に検認が完了するまで少なくとも1~2ヶ月くらいの時間がかかります。

検認が完了するまでは、遺言の内容や効力が確定しないため、実質的に相続手続きを進めることができません。

ですので、自筆証書遺言がある場合には、被相続人が亡くなった後速やかに、検認手続きを行う必要があります。

※検認手続きの代行については、(自筆証書)遺言の検認手続きサポートをご覧ください。

※2020年から施行された遺言書保管法により法務局に保管されている自筆証書遺言は、検認の必要がなく、スピーディに相続手続きを進められます。

公正証書遺言の場合には家庭裁判所による検認が不要

被相続人が公証役場で作成した公正証書遺言の場合には、公証人により遺言の内容や形式について法律的な確認を受けているため、家庭裁判所による検認の手続きは必要ありません。

公正証書遺言の謄本や正本を、相続手続きの各窓口(不動産の場合は法務局、預貯金の場合は各金融機関など)に提出すれば、相続手続きを受け付けてもらうことができます。

遺言がある場合でも、遺言の指定通りにならない場合

以上のように、遺言がある場合は、原則的に、遺言による遺産の分け方の指定(被相続人による遺産の分け方の指示)が最優先されますが、例外的に、以下のケースでは、遺言の指定通りにならない場合があります。

遺留分の請求がある場合

遺留分とは、カンタンに言えば、遺言があったとしても、「最低限もらえる分」のことです。

遺留分の権利は、亡くなった方の法定相続人である配偶者、子、直系尊属(父母など)だけに認められています。
(兄弟姉妹にはありません)

遺言の内容が、ある法定相続人の遺留分を侵害している場合(遺留分よりも少ない場合のことです)、侵害された人は、足りない分を、請求することができます。

遺留分を請求する権利は強く、遺言による遺産の分け方の指定よりも優先されます。

法定相続人全員による遺言の指定と異なる遺産の分け方の合意

遺言があったとしても、法定相続人全員による合意があれば、遺言の指定とは異なる遺産の分け方をすることができます。

ただし、一人でも合意できない人がいれば成立しないので、法定相続人が多い場合などは難しいでしょう。

遺言から漏れた遺産がある場合

例えば、不動産A、不動産B、預貯金C、預貯金Dという遺産があり、A、B、Cについては遺言で分け方の指定があったような場合です。

遺言から漏れた預貯金Dについては、以下で述べる「遺言が無い場合の相続手続き」と同じく、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)にて分け方を決めることになります。

遺言が無い場合の相続手続き

では、被相続人に遺言が無い場合には、遺産の分け方はどうなるでしょうか?

この場合、法定相続人により、法定相続分を基準として、話し合いにより、遺産の分け方を決めることになります。

この話し合いのことを、「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議は、法定相続人全員で行わなければいけません。
(一人でも欠けてはならず、仮に全員で行わなかった遺産分割協議は無効です)
(「全員で行う」といっても、全員が一堂に会する必要はなく、書面の持ち回りの形式など、自由な形式で行うことができます)

遺産分割協議の結果、合意に達すれば、その証拠として、遺産分割協議書という書面を作成します。

そして、この遺産分割協議書に、相続人全員の実印(印鑑証明書を添付します)を押印し、不動産の名義変更、預貯金の解約・払戻しなど、各種の相続手続きの窓口で、提出することになります。

遺言がある場合でも、遺言で指示がなかった遺産については、遺産分割協議により遺産の分け方を決め、同じように遺産分割協議書を作成・提出します。

まとめ

このように、亡くなった方(被相続人)に遺言がある場合と、遺言が無い場合では、相続手続きの進め方や遺産分割方法の決め方が異なります。

ご家族が亡くなったら、速やかに遺言の有無を確認するようにしてください。

被相続人の遺言の有無がわからない場合は、当センターの遺言の有無の調査代行サービスをご利用ください。

 

主なサービスメニュー