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相続手続きを放置してしまう理由
以下のような理由で、相続手続きを長期間放置してしまう方がいます。
- 他の相続人と疎遠である
- 他の相続人が行方不明・音信不通である
- 他の相続人と関わりたくない(仲違いをしている)
- 遺産の話は、何となく、きっかけが難しい
- 協議をしてみたが、わがままな主張が多く、話がまとまらない
- 相続人の中に認知症の方・知的障害や精神障害のある方がいて、手続きが複雑である
- 相続登記(不動産の名義変更)の手続きが面倒くさい
- 相続登記には費用がかかるので、しばらく放置したい
たしかに、これらの理由には理解できる部分はあります。
しかし、時間が経つにつれ、以下で述べるような大きなトラブルになる可能性があります。
「早く着手してれば、こんなことにならなかったのに・・・」と後悔しないように、相続手続きは、早め早めに着手することが大切です。
相続手続きを放置すると起こり得る2つのトラブル
- トラブル1 相続人が死亡し、相続関係がより多人数化・複雑化する
- トラブル2 相続人の中に、認知症になってしまい相続手続きができなくなる方が出てくる
以下では、上記2つのトラブルについて、詳しくご説明します。
トラブル1 相続人が死亡し、相続関係がより多人数化・複雑化する
亡くなられた方(被相続人といいます)に遺言書が無い場合、遺産の分け方について、相続人全員で協議を行います。その協議のことを遺産分割協議といいます(一次相続)。
相続手続きをしないまま長期間放置すると、相続人の中に、死亡してしまう人が出てきます(二次相続の発生)。
死亡した相続人にも、配偶者、子、兄弟姉妹などの相続人がいる場合、一次相続の相続人だけでなく、二次相続の相続人も含めて、(一次相続の)遺産分割協議を行わなければならなくなります。
とくに、一次相続の被相続人が高齢で亡くなった場合、その相続人も高齢であることが多く、二次相続だけでなく、三次相続、四次相続・・・というふうに、相続人の数が膨れ上がってしまう可能性もあります。
つまり、一次相続の発生(最初の被相続人の死亡)から時間が経てば経つほど、より多くの相続人が関わることになるので、遺産分割協議をまとめるのが困難になります。
トラブル2 相続人の中に、認知症になってしまい遺産分割協議ができなくなる方が出てくる
相続手続きをしないまま長期間放置すると、相続人の中に、認知症を発症する方が出てきます。
※政府統計によると、現在、65才以上の約7人に1人、85才以上の約2人に1人が認知症と診断されています。
遺産分割協議は法律行為の一つなので、認知症が発症しているなど、判断能力が欠如している方は、当事者として遺産分割協議に参加することができません。
家族や親族であっても、認知症の相続人の代理をすることはできません。また、だからといって、認知症になった相続人を除外して遺産分割協議を行っても無効になります。遺産分割協議は、法定相続人が全員参加しなければならないからです。
また、相続放棄も法律行為ですので、認知症で判断能力が失われている状態では、相続放棄の手続きもすることができません。
このように、相続人の中に認知症の方がいる場合、、遺産分割協議も進めることができず、また、だからといって、遺産分割協議から除外することもできず、相続手続きがまったく進まない状態になってしまいます。
では、相続人の中に認知症の方がいる場合、どのように相続手続きを進めればよいのでしょうか。
この場合には、判断能力が欠如している相続人に代わって、遺産分割協議に参加する成年後見人(多くの場合、家庭裁判所が選ぶ弁護士・司法書士などが選任されます)の選任が必要になります。
しかし、成年後見人はいったん選任されると、原則的に、本人が死亡するまで外すことができません。遺産分割協議が終了したからといって、成年後見人を外すことはできないのです。
成年後見人は、多くの場合、専門職(弁護士や司法書士など)が選任されますので、本人が死亡するまで専門職後見人への毎月の報酬(本人の財産額によりますが少なくとも2、3万以上)がかかり続けます。
このように、相続手続きを放置してしまったために、相続人の中に認知症の方が出てきてしまった場合には、その方のご家族にも、成年後見人を付けるための手続きの負担と、かからなかったはずの後見人への報酬を、かけさせてしまうことになるのです。
このように、相続手続きを長期間放置することは、相続人のご家族にも迷惑を掛けかねないことだと言えます。
遺産分割協議がまとまらないことによるデメリット
相続手続きを長期間放置し、上記の2つのトラブル
- トラブル1 相続人が死亡し、相続関係がより多人数化・複雑化する
- トラブル2 相続人の中に、認知症になってしまい相続手続きができなくなる方が出てくる
の状態に陥ってしまい、遺産分割協議をまとめることが困難になると、以下のようなデメリットが発生します。
デメリット1 金融機関の口座の解約・払戻しができない
金融機関の相続手続きでは、遺産分割協議書の提出が求められます。
これは銀行だけでなく、証券会社などで、株式や投資信託の名義が変更する場合にも同様です。
つまり、遺産分割協議がまとまらない限り、金融機関にある遺産は「凍結」状態で、引き出せないままになってしまいます。
デメリット2 相続登記ができない
亡くなった方の名義になっている不動産を、相続人の名義に変更することを相続登記といいます。
相続登記の手続きには、遺産分割協議書の提出が必要です。
つまり、遺産分割協議がまとまらないかぎり、相続登記ができないのです。
亡くなった方の名義のままの不動産は、売却することも、抵当権(担保にすること)もできず、時間が経てば経つほど、処分が難しくなってしまいます。
※2024年4月から、相続登記は義務化されます。
デメリット3 相続税の申告・納税に影響が出る
相続税の申告・納税は、相続開始から10ヶ月以内と決められています。
この期限以内に、遺産分割協議がまとまらない場合は、仮に法定相続分で遺産を分けたものとして、申告・納税を行わなければなります。
申告を行わないと延滞税などの対象になります。
また、配偶者の税額特例や、小規模宅地等の特例などは、相続開始から3年以内でないと適用されないので、遺産分割協議がまとまらないために、結果的に大幅に相続税額が増えてしまう可能性もあります。
このように、遺産分割協議がまとまらないことは、相続税の申告・納税にも悪影響があるのです。
まとめ 面倒くさい相続手続きでも、専門家の力を借りて早めの着手を
以上のように、相続手続きは理由をつけて先送りするほど、手続きが困難になったり、余計なお金がかかったりします。最悪の場合、それが相続争いのきっかけにもなりえます。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しようように、早め早めに着手するようにしましょう。
1人の方が亡くなった後に、ご遺族が行わなければならない相続手続きは、細かい手続きも含めれば、数十件~多い方では100件以上の手続きがあります。
具体的には、戸籍、住民票、預貯金、不動産、自動車、死亡保険、健康保険、介護保険、年金、公共料金関係の手続きなどです。
相続手続きを始める際には、まず必要な手続きをリストアップし、相続手続きの全体像を把握することが大切です。
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また、何から始めたらよいかわからない、平日は仕事により多忙で相続手続きのための時間が取れないという方もいらっしゃると思います。
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