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遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、亡くなった方(被相続人)に、
- 遺言が無い場合
- 遺言があったとしても、一部の遺産の分け方について、指定がない場合
- 遺言による指定とは異なる遺産の分け方をしたい場合
に、法定相続人全員の話し合いによる協議によって、誰に、何を、どのように分けるかを決めることです。
遺産分割協議に期限はあるのか? 放置するとトラブルの可能性が
遺産分割協議には、法律で決められた期限はありません。
そのため、以下のような理由で、遺産分割協議を長期間放置してしまう方がいます。
- 他の相続人と疎遠である
- 他の相続人が行方不明・音信不通である
- 他の相続人と関わりたくない(仲違いをしている)
- 遺産の話は、何となく、きっかけが難しい
- 協議をしてみたが、わがままな主張が多く、話がまとまらない
- 相続人の中に未成年の方、認知症の方、知的障害や精神障害のある方がいて、手続きが複雑である
- 相続登記(不動産の名義変更)の手続きが面倒くさい。
- 相続登記には費用がかかるので、しばらく放置したい
たしかに、これらの理由には理解できる部分はあります。
しかし、時間が経つにつれ、以下で述べるような大きなトラブルになる可能性があります。
- トラブル1 相続人が死亡し、相続関係がより多人数化・複雑化する
- トラブル2 相続人の中に、認知症になってしまい相続手続きができなくなる方が出てくる
「早く済ませていれば、こんなことにならなかったのに・・・」と後悔しないように、遺産分割協議は、できるうちに早めに終わらせるようにすることが大切です。
上記2つのトラブルについて詳しくは、相続手続きを放置したらどうなるか?をご覧ください。
遺産分割協議は法定相続人全員が参加する必要がある
遺産分割協議は、法定相続人全員が参加しなければなりません。法定相続人のうち1人でも参加していないと、遺産分割協議は無効となってしまいます。
しかし、「参加」といっても、全員が一堂に会して行う必要はありません。
遺産分割協議のために、法定相続人全員が、同じ日時に1つの場所に集結するというのは、理想的ではありますが、現実的に難しい場合が多いです。法定相続人の数が多いほど、難易度は上がります。
たとえば、A、B、C、Dの4人が法定相続人となるとして、札幌在住のAとBがまず協議し、次にAと東京在住のCが協議し、最後にAと大阪在住のDが協議し、その協議した内容で遺産分割協議書をまとめるということでもよいのです。
また、電話(テレビ電話でももちろん可能)やメールやSNSなど、直接会わずに話し合うという方法でもOKです。
つまり、法定相続人全員が協議できるのであれば、遺産分割協議はどのような形式であってもよいのです。
また、法定相続人の中に認知症や知的障害などにより判断能力が欠如している方がいる場合でも、その方を除いて協議を行うことはできません。この場合、本人が遺産分割協議を行うことができないため、原則として、成年後見人を選任した上で、協議を行うことになります。
(詳しくは相続人の中に認知症の方がいる場合、相続人の中に知的障害のある方がいる場合へ)
法定相続人の中に未成年者がいる場合には、未成年者本人が協議に参加することはできないため、親権者が代理人として協議に参加するか、特別代理人を選任した上で協議を行う必要がある場合があります。(詳しくは相続人の中に未成年の方がいる場合へ)
法定相続人の中に海外在住の方がいる場合でも、その方も協議に参加する必要があります。この場合、サイン証明や在留証明など、在外公館が発行する特殊な書類が必要になります。
(詳しくは相続人の中に海外在住の方がいる場合へ)
遺産分割協議書には相続人全員の押印が必要
遺産分割協議自体はどのような形式であってもよいのですが、協議の結果を記載する遺産分割協議書には、法定相続人全員による実印での押印が必要です。
実印とは、住所地の市町村に印鑑登録してある印鑑のことで、その登録されている印影をもとにして市町村が印鑑証明書を発行します。
法定相続人が遠方にいる場合には、郵送して書類をやり取りするなど、遺産分割協議書に全員の実印による押印をもらう作業が、最も手間のかかる部分になります。
遺産分割協議の進め方
ステップ1 遺言の有無の確認
まず、最初に、被相続人に遺言があるかどうかを確認することが重要です。
遺言の有無により、この後の相続手続きの流れがまったく異なるからです。
遺言がある場合は、原則として、遺言による遺産の分け方の指定が最優先されます。
- 遺言が無い場合
- 遺言があったとしても、一部の遺産の分け方について、指定がない場合
- 遺言による指定とは異なる遺産の分け方をしたい場合
には、遺産分割協議を行うことになります。
ステップ2 相続人の調査
まず大前提として、遺産分割協議に参加すべき法定相続人を確定しなければいけません。
被相続人の戸籍を出生まで辿ることにより、法定相続人を確定します。
法定相続人を確定することで、法定相続分も判明することになります。
法定相続分は、必ずしもこれに基づいて遺産を分ける必要はありませんが、遺産分割協議を行う時の基準として使われます。
相続人の調査については、戸籍取得代行サービスをご覧ください。
(当センターでは、戸籍の取得だけでもご依頼してできます)
ステップ3 相続財産の調査
遺産の分け方を協議するには、被相続人にどのような財産があるのか、その全容が法定相続人全員に明らかになっていなければいけません。
そうでなければ、誰が、何を、どのくらい相続するのか、話し合うことができないからです。
相続財産の調査の方法は、相続財産の種類によって異なります。
すべての相続財産が判明したら、それを相続財産目録(リスト)の形にして、法定相続人全員がひと目でわかるようにしておくのが一般的です。
相続財産の調査と財産目録作成については、相続財産調査・財産目録作成代行サービス、借金・債務の調査(信用情報開示請求)代行サービスをご覧ください。
ステップ4 法定相続人全員で協議する
ここが遺産分割協議の本番です。
相続財産目録を元に、法定相続分を考慮に入れがなら、最善の分け方を検討します。
協議する際に、法律上の疑問が生まれることがあります。
そのような場合には、当センターの遺産分割協議への立ち会いサービス(相続人全員が集まることができる場合)や、遺産分割協議のサポート(相続人が遠方・疎遠の場合)を活用いただくこともできます。
当センターの行政書士が中立的な立場で調整役となり、法律上の疑問点に答えたり、遺産の分け方についてのアドバイスなどを行います。
ステップ5 遺産分割協議書を作成する
話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成し、法定相続人全員が実印を押して印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書には、後日のトラブル防止や各種の名義変更手続きをスムーズに行うため「誰が、どの財産を、どれくらい相続するか」を明確に記述します。
曖昧な記述をしてしまうと、「このような内容に同意した覚えはない」などと、協議を蒸し返すような相続人が出てこないとも限りません。
誰が読んでも解釈が同じになるような明確な文言で記載することが大切です。
その他にも、以下の点に注意して、遺産分割協議書を作成します。
- 被相続人が誰なのか、明確に記述する。
- 法定相続人全員の住所や氏名を、正確に記述する(印鑑証明書の記載と同一の表記)。
- 不動産は登記事項証明書の記載通りに記述する(土地→所在地、地番、地目、地積)(建物→所在地、家屋番号、種類、構造、床面積)
- 預貯金は特定できるように記述する(金融機関名、支店名、口座種類、口座番号、金額)
- 後日、新たな遺産が発見された場合にどのように対処するかを記述する
- 協議が成立した年月日を、正確に記述する。
その他、ケースバイケースで、遺産分割協議書に記載しなければいけないことは多数あります。
抜け漏れや、ミスがないように、相続手続きの専門家のサポートを活用して、正しく作成するようにしてください。
当センターでは、遺産分割協議書の作成のみのご依頼も受け付けています。詳しくは、遺産分割協議書の作成代行サービスをご覧ください。
ステップ5 遺産分割協議書の通りに遺産を分配する
ここまで来たら、後は、遺産分割協議書の通りに、実際に各法定相続人に遺産を分配する手続きになります。
- 不動産の名義変更→管轄の法務局
- 預貯金口座→各金融機関
- 株式・投資信託など→証券会社
- 自動車の名義変更→運輸支局など
それぞれの手続きで、必要な書類は異なり、場合によっては、書類の不足・不備などにより、何度も足を運ばならければならないこともあります。
また、官公署、金融機関はすべて土日祝日は休みですですので、平日は仕事のために手続きができないという方も多いと思います。
遺産分割協議については、下記のページを参考にしてください。