亡くなられた方に遺言書が無い場合、法定相続人全員により遺産の分け方を話し合いで決める遺産分割協議を行う必要があります。

そして、協議で決まった内容を遺産分割協議書として作成し、不動産の名義変更手続きであれば法務局へ、預貯金の解約・払戻し手続きであれば各金融機関へ、など、手続きの内容に応じて、各機関に提出しなくてはいけません。

しかし、遺産分割協議といっても、法定相続人の中に遠方に住んでいる方がいるケースも多いことでしょう。

たとえば、札幌で高齢の夫(A)が亡くなり、札幌在住の妻(B)、札幌在住の長女(C)、東京在住の長男(D)の4名が法定相続人になる、というのが典型的な例です。

このように、法定相続人が遠方にいる場合に、どのように遺産分割協議を進め、遺産分割協議書を作成すればよいのでしょうか。

遠方にいる場合でも、法定相続人全員による遺産分割協議が必要

遺産分割協議は、法定相続人全員が参加して行う必要があります。

逆に言えば、遠方に住んでいる法定相続人を除いて遺産分割協議を行っても、その協議は無効であり、法務局や金融機関なども、遺産分割協議書を受け付けてくれません。

では、法定相続人が遠方にいる場合でも、わざわざ全員が一堂に会して、遺産分割協議を行わなければいけないのでしょうか?

遺産分割協議は一堂に会して行わなくてもよい

遺産分割協議のために、法定相続人全員が、同じ日時に1つの場所に集結するというのは、理想的ではありますが、現実的に難しい場合が多いです。法定相続人の数が多いほど、難易度は上がります。

ですので、実務の上では、遺産分割協議は一堂に会して行わなくてもよい、ということになっています。

例えば、上記の例(リンク)で、B、C、Dの3人が法定相続人となるケースでは、札幌在住の妻Bを相続人代表として、まずBとCで協議し、次にBとDが協議し、その協議した内容で遺産分割協議書を作成するということでもよいのです。

また、電話(テレビ電話でももちろん可能)やメールやSNSなど、直接会わずに話し合うという方法でもOKです。

つまり、法定相続人全員が協議できるのであれば、遺産分割協議はどのような形式であってもよいのです。

遺産分割協議書には法定相続人全員の押印が必要

遺産分割協議自体はどのような形式であってもよいのですが、協議の結果を記載する遺産分割協議書には、法定相続人全員による実印での押印が必要です。

実印とは、住所地の市町村に印鑑登録してある印鑑のことで、その登録されている印影をもとにして市町村が印鑑証明書を発行します。

法定相続人が遠方にいる場合には、遺産分割協議書に全員の実印による押印をもらう作業が、最も手間のかかる部分になります。

方法の1つとして、作成した遺産分割協議書を、郵送でそれぞれの法定相続人に順番に送るという方法があります。

上記の例で言えば、
Bが遺産分割協議書を作成し署名捺印してCへ送付→
Cが署名捺印してDに送付→
Dが署名捺印してBに送付

というような流れになります。

この方法のデメリットとしては、相続人の(数が多いほど)間の郵送に時間がかかるということと、もし不備(書類の記載内容や捺印方法に間違いがある場合など)があった場合に、修正に時間がかかったり、最悪、すべてを最初からやり直さなければならないことです。

別の方法としては、同じ内容の遺産分割協議書を法定相続人の数だけ複数枚作成し、別々に郵送して各自に署名捺印してもらい、最後に1つの書類として(ホチキスで)まとめるというやり方も可能です。

法定相続人の数が多く、順番に郵送していると時間がかかりそうな場合に、よく利用される方法です。

以上が、法定相続人が遠方に住んでいる場合の、相続手続きになります。

遠方に住んでいるだけでなく、疎遠・不仲の法定相続人がいる場合には専門家へ相談を

兄弟姉妹や甥姪が法定相続人になる場合、または、親子間の相続であっても、被相続人の先妻の子が法定相続人になる場合など、法定相続人同士が遠方に住んでいるというだけでなく、今まで一度も(ほとんど)会ったこともなかったり、過去に仲違いをして長年音信不通になっているというケースもあります。

実は、このような場合に、遺産分割協議が不調に終わったり、何年も時間がかかったり、最悪の場合には、相続争いに発展することが多いのです。

このようなケースでは、法定相続人同士で直接にやり取りするよりも、行政書士のような中立的な調整役を立てることで、相続手続きがスムーズに進むことが多いです。

疎遠・不仲の法定相続人がいる場合には、ぜひ当センターに最初にご相談ください。

※弁護士を立ててしまうと、逆に、相手に「争いを開始する」と意思として受け取られれ、警戒されてしまいます。弁護士に依頼するのは、最後の手段にしておきましょう。

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