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法定相続人の中に海外在住の方がいる場合、「サイン証明」や「在留証明」が必要
法定相続人がすべて日本国内にいる場合には、遺産分割協議書に実印で押印をし、印鑑証明書を添付して、不動産の名義変更の手続きや金融機関の預貯金の解約・払戻しなどの手続きを進めていくことになります。
また、不動産を相続する法定相続人については、住民票の提出も必要になります。
しかし、海外に居住している法定相続人は、印鑑証明書や住民票を取得することができません。印鑑証明書や住民票は、日本における住民登録のデータと同期しているため、国内に住所の無い海外在住の方には発行されないからです。
そのため、これに代わる書面として、日本の在外公館が作成した証明書を、提出する必要があります。
印鑑証明書の代わりになるのが、「サイン証明」
住民票の代わりになるのが、「在留証明」
となります。以下にこの2つの証明書について説明いたします。
サイン証明とは?(印鑑証明書の代わり)
サイン証明は、申請をした人の署名(サイン)が確かに在外公館職員の面前でされたことを証明するもので、相続手続きにおいては、印鑑証明書の代わりになる書類です。
サイン証明には、割印方式、所定紙方式、の2種類があり、提出先によって、必要となる方式が異なりますので、提出先にどちらの方式が必要なのか、事前に必ず確認するようにします。
いずれの方式も、在外公館職員の面前で署名を行う必要があるため、申請をする方本人が在外公館へ出向く必要があります。代理人による申請や郵送での申請はできません。
割印方式
割印方式は、在外公館が発行する証明書と、申請をする人が領事の面前で署名をした私文書(相続手続きにおいては遺産分割協議書)を、1枚の書類として綴りあわせて割印を行う方式です。
在外公館職員の面前で、持参をした書類(遺産分割協議書)に署名・拇印をすると、その「署名・拇印をしたのは、○○さん本人です。当館職員が立ち会い、証明しました」旨の証明書が貼り付けられます。
(画像は在シンガポール日本国大使館ホームページより)
所定紙方式
所定紙方式は、申請をした人の署名を単独で証明するものです。
もともとの書類とは一体化させず、筆跡が同一であることによって証明をするものです。
(在シンガポール日本国大使館ホームページより)
相続手続きには、どちらが必要?
一般に、金融機関の預貯金の解約・払戻し手続きでは、所定紙方式が求められます。
しかし、一部の金融機関では、割印方式が求められることもありますので、あらあじめ金融機関に確認をするようにします。
不動産の相続の場合は、割印方式が求められます。
在留証明とは?(住民票の代わり)
在留証明は、外国に滞在する日本国籍を持つ方が現在その国に在住していることを証明するものであり、相続手続きにおいては、住民票の代わりになる書類です。
在留証明は、サイン証明と同じく現地の在外公館で発行されるので、サイン証明と同時に申請するとよいでしょう。
在留証明の発行には、以下の条件があります。
- 日本国籍を有すること
- 現地にすでに3か月以上滞在し、現在も居住していること
- 日本に住民登録がないこと
- 原則として、証明を必要とする本人が公館へ出向いて申請すること(やむを得ない事情がある場合には代理人も可能)
(在パキスタン日本国大使館ホームページより)
サイン証明や在留証明の取得手続きは在外公館にて
サイン証明や在留証明は、いずれも海外に所在する日本の在外公館で取得できます。
在外公館とは、大使館や総領事館、政府代表部を総称したもので、世界各地の在外公館のリストは、外務省ホームページで確認できます。
取得のために必要な書類は、各在外公館のホームページに掲載されていますので、事前に必ず確認の上、訪問するようにします。
取得に必要な費用は、証明書1通につき、日本円で約1000~2000円程度で、支払いは現地通貨の現金での取り扱いになります。
一時帰国の予定がある場合には、公証役場で「私署証書の認証」
海外在住の法定相続人が、一時帰国する予定がある場合には、日本の公証役場(全国各地にあります)におけて「私署証書の認証」という手続きを行えば、記名拇印が本人によりなされたものであることを証明することができます。つまり、上記のサイン証明の代わりになります。
私署証書の認証の手数料は5500円です。
この方法をとれば、事前に署名が必要な書類を海外へ郵送するなどの手間を省くことが可能になりますが、
ただし、海外在住の相続人が不動産を相続する場合には、相続登記手続きにおいて、在留証明を提出する必要があり、結局は、在外公館を訪れる必要がありますので、ご注意ください。
まとめ 法定相続人が中に海外在住の方がいる場合は、早めに手続きを
法定相続人が中に海外在住の方がいる場合でも、在外公館にサイン証明・在留証明を発行してもらうというハードルさえクリアできれば、通常通りの相続手続きが可能です。
しかし、在外公館に出向くには時間や費用がかかりますし、書類を外国に郵送(返送も)する場合にも、郵便事情にもよりますが、国内にいるよりも日数がかかることもあるでしょう。
ですので、法定相続人が中に海外在住の方がいる場合には、早め早めの手続きを心掛けましょう。
また、通常とは異なるやや複雑な手続きになりますので、専門家によるサポートが必要な場合は、当センターまでお気軽にお問い合わせください。