遺産の分け方を話し合いで決める遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があります。
法定相続人の中に行方不明者がいる場合でも、それは同じです。
では、法定相続人の中に行方不明者がいる場合、どのように相続手続きを進めればよいのでしょうか。
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遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要がある
遺産分割協議には、行方不明の法定相続人も含めた法定相続人全員が参加することが必要です。
「長年音信不通で連絡が取れないし、構わないだろう」などと、行方不明の法定相続人を除外して遺産分割協議を行っても、その協議は無効ですし、行方不明の法定相続人の署名押印の無い遺産分割協議書を法務局(不動産の名義変更)や金融機関に提出しても、相続手続きを行うことはできません。
行方不明だとしても、生存しているかぎり、行方不明の方の相続の権利は消えないのです。
遺言書があれば行方不明の法定相続人がいても相続手続きができる
遺言書がある場合と無い場合で相続手続きは異なります。まずは遺言書があるかどうかを確認するところから相続手続きは始まります。
遺言書がある場合には、遺言書の指示にしたがって相続財産を分けることになります。したがって、原則的に、遺産分割協議を行う必要はありません。
逆に、遺言書が無い場合には、必ず遺産分割協議が必要です。法定相続人全員により、相続財産について、誰が何をどのくらい相続するのか、話し合い(書面による持ち回り方式でも可能です)を行います。
(法定相続人が1人のみの場合には、遺産分割協議は不要です)
遺言書があれば、遺産分割協議は不要ですから、法定相続人の中に、行方不明の方がいる場合には、生前に遺言書を作成しておくと、相続手続きがスムーズになり、ご遺族の負担を軽減することになります。遺言作成については、こちらのホームページをご覧ください。
法定相続人に行方不明者がいる場合は、まず現住所を調べ、連絡を試みる
では、法定相続人に行方不明者がいる場合にはどうすればよいのでしょうか。
法定相続人の中に行方不明者がいる場合には、まず行方不明者の住所を特定する必要があります。
行方不明者の住所を特定するには、法定相続人の戸籍謄本を使います。行方不明者の現在の本籍地を調べて(被相続人の戸籍をさかのぼって調べていくことにより、その法定相続人の現在の本籍地の市町村を調べることができます)、その市町村に戸籍の附票を請求すれば、現在の住所がわかります。
行方不明者の住所がわかったら、手紙で連絡を試みます。手紙には、「○○が亡くなって相続が発生した」旨、「あなたも法定相続人の一人である」旨、「遺産を分けるために遺産分割協議が必要である」旨、「「連絡がほしい」旨、記載します。手紙を送る際には法定相続人の関係図も入れておけば、相手の理解もスムーズでしょう。
行方不明者から連絡がない場合は、不在者財産管理人を選任する
住所を特定し、手紙を送っても、返事が無い場合もあります。また、調べた住所に法定相続人がすでに住んでいないことあるでしょう。
このように、どうしても相続人が行方不明・生死不明の場合、家庭裁判所に申し立てることにより不在者財産管理人の選任を行わなければなりません。不在者財産管理人とは、行方不明者の代理人として遺産分割協議に参加し、行方不明者の所在がわかる時まで、相続した遺産を管理する者のことです。
不在者財産管理人の選任の申し立ては、行方不明者の配偶者や他の法定相続人、その他利害関係者が行うことができます。
不在者財産管理人には、利害関係のない親族がなるのが一般的ですが、適任者がいない場合には、家庭裁判所が選ぶ弁護士や司法書士が就任します。
不在者財産管理人が選任されると、その者が遺産分割協議に参加して不在者の財産を管理することになります。行方不明者の所在がわかった時には、不在者財産管理人が管理していた財産をその者に引き渡すことになります。
失踪宣告の申立て
不在者財産管理人を選任する以外にも、失踪宣告を行うという選択肢もあります。
失踪宣告は、生死不明となっている人について、「法律上においては」、死亡しているものとみなす制度です。
失踪宣告を受けると、その行方不明者は死亡しているものとして扱われるので、その法定相続人を除いた状態で遺産分割協議を行うことができます。
失踪宣告には2つの種類があります。
普通失踪
普通失踪は、特別な出来事(災害・事故など)が無いのに、住所地を去ったまま、音信不通・行方不明になっているケースです。
普通失踪は、その人の生存が最後に確認された日の翌日から起算して、満7年が経過してから家庭裁判所に申立てを行います。
家庭裁判所が失踪宣告を行うと、その行方不明者は満7年を経過した日に死亡したものとみなされるので、遺産分割協議に参加を求める必要もなくなります。
特別失踪
特別失踪は、自然災害・事故のようなのような特別な出来事によって行方不明になっているケースです。
特別失踪は、普通失踪よりも期間が短く、災害・事故といった危難が終わってから1年経過した時点で申立てを行えます。家庭裁判所が失踪宣告を行うと、危難が去った時点で死亡したとみなされるので、遺産分割協議に参加を求める必要もなくなります。
まとめ
法定相続人の中に行方不明者がいる場合、上記のように、相続手続きが複雑になり、時間もかかります。不在者財産管理人の選任の申立てや、失踪宣告には、専門家のサポートが必要です。当センターにお早めにご相談ください。
また、行方不明者がいる場合でも、生前に遺言書があれば、その行方不明者がいなくても相続手続きを行えますので、遺言の作成をご検討ください。
詳しくは、当センターの行政書士が運営するこちらのホームページをご覧ください。